安達裕哉(著)「頭のいい人が話す前に考えていること」(ダイヤモンド社)を読みました。
本書を一言で紹介するならば、次のとおりです。
「頭のよさは他人が決める」という前提に立ち、他人から「頭がいい」と思ってもらうための「話す前の」準備や心構えを紹介する本
他人から「頭がいい」と思ってもらうといっても、「中身が伴わないのにハッタリで頭がよさそうに見せるテクニック」を紹介する本ではありません。
きちんと中身が伴った、いわゆる「本当に頭のいい人」と思われるための方法論です。
本書をオススメできるのは、次のような方です。
・「頭のいい人」の定義や「頭のいい人の考え方の言語化」に興味がある人
・「客観的な思考」を上手に「言語化」できるようになりたい人
総論
黄金法則2(頭のよさは他人が決める)=「本書の最上位概念」
本書では、「頭いい人が話す前に考えていること」を、7つの黄金法則と5つの思考法として紹介されています。
黄金法則の2つ目に「頭のよさは他人が決める」という話が出てくるのですが、私はこれこそが本書の最上位概念(全ての黄金法則や思考法の大前提)と理解しました。
なぜなら、「頭のいい人」=「社会的知性(SQ)の高い人」と定義しているからです。
つまり、本書は「社会的知性(SQ)の高い人が話す前に考えていること」と言い換えられるというのが、私の理解です。
社会的知性(SQ)とは?
米国の心理学者ダニエル・ゴールマン氏が提唱したとされる概念。
ざっくりと言えば「他人と上手に関わっていける知性」のことで、他人の気持ちを理解してふさわしい行動を取ったり、自分の感情をコントロールしたりする能力。
要するに「相手や周囲のことをどれだけ考えて話せるか」
上記のとおり、本書では「頭のいい人」=「社会的知性(SQ)の高い人」と定義されています。
そのため、本書で紹介される黄金法則や思考法は「社会的知性(SQ)の高め方」をベースにしたものが多いです。
社会的知性(SQ)をいかに高めるか、黄金法則や思考法の共通点は、要するに「相手や周囲のことをどれだけ考えて話せるか」だと理解しました。
まとめ:「頭のいい人が話す前に考えていること」
・頭のよさは他人が決める(社会的知性)。
・だから、「頭のいい人」になるには、他人から「頭がいい」と思ってもらう必要がある。
・そのためには、「相手や周囲のことをどれだけ考えて話せるか」にかかっている。
本書の内容1つ1つは、「どこかの本に書かれていた話だな」というのが正直な印象でした。
しかし、「どこかの本に書かれている話」を「頭のいい人が話す前に考えていること」という観点から集約・整理した点にこそ、本書の価値があると言えるでしょう。
各論
以下、本書の内容で特に印象的だった点を、ご紹介します。
黄金法則1「とにかく反応するな」
いわゆる「アンガーマネジメント」の話です。
アンガーマネジメントについては、以前「脳が知っている怒らないコツ」という本でもご紹介しました。
その本で書かれていたのは、「怒っても何一つ良いことがない」ことでした。
本書も同様の主張ですが、よりシンプルに「感情的な人間はバカに見える(実際に頭の働きが悪くなる)」(意訳)という論調です。
「怒らないようにしよう」と思う動機づけとしては、こちらの方が人に響くかもしれません。
ダニエル・カーネマン(著)「ファスト&スロー」を引き合いに出して、「キレないための具体的な対策」が2つ紹介されているのも、興味深かった点です。
思考法1「客観視」
話が浅くなる原因として、次の3つが紹介されていました。
〝話が浅い人〟の特徴は3つあります。
1 根拠が薄い
2 言葉の「意味・定義」をよく考えずに使う
3 成り立ちを知らない
安達裕哉(著)『頭のいい人が話す前に考えていること』(p.126). ダイヤモンド社.
いずれも経験則としては理解しているものばかりですが、3つと言語化されている点で、頭の再整理に役立ちました。
思考法2「整理」
「事実と意見を分けて話す」ことは、分かりやすく話すための重要なポイントの一つです。
これだけだと何ら目新しい話ではないですが、木下是雄(著)「理科系の作文技術」という本を引用し、「事実」と「意見」の定義や区別を分かりやすく説明することに成功していると感じました。
木下是雄(著)「理科系の作文技術」は読んだことがありませんでしたが、面白そうな内容なので近いうちに読んでみたいと思います。
また、ダニエル・カーネマン(著)「ファスト&スロー」を引き合いに出して、
・混同してしまいやすい原因
・「事実」と「意見」を分けて話せるようになる対策
この2点が具体的に解説されている点は、他の本ではあまり見ない視点で興味深かったです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!